磯釣りは、魚がいる場所よりも「そこまでの一歩」のほうがよほど難しい。
海が荒れていなくても、足元の状態ひとつで状況は急に変わる。
ぼくが強く覚えているのは、夜明け前の磯で虫に追われて焦り、岩の角を踏み外しかけた瞬間。
釣り場に着く前から命のラインに触れた気がして、背中が一気に冷えた。
その日以来、磯は“歩き方そのものが技術”だと思うようになった。
見た目では判断できない“危険サイン”
岩の色や質感は、危険を正確には教えてくれない。
濡れていないように見えても、薄い塩の膜が残っているだけでスケートリンクみたいになる。
黒ヅミはもちろん危ないけれど、むしろ厄介なのは「乾いて見えるのに乾いていない」微妙な斜面。
足裏に乗せた瞬間だけヌルッと滑って、体の軸が勝手に倒れるあの感覚は忘れられない。
焦りと視界の欠落が危険を倍増させる
虫に刺される、風が強くなる、潮が近づく──人は焦った瞬間に足元ではなく目的地を見てしまう。
視線が一度でも上がると、段差やコケが突然現れる。
特に夜は、ライトが“明るいところだけを映す”ので暗い部分が完全に見えなくなる。
そこに一歩出した瞬間に、真横へ滑ることがある。
磯では重さそのものがリスクになる
磯道で荷物が重いと、身体が自分の意思より先に倒れる。
特に片手にだけ重みがあると、段差でそのまま引っ張られて体が傾く。
荷物1kgの差でも、磯ではバランス崩壊の幅が大きい。
釣りを始めた頃のぼくは「道具を全部持っていこう」と思いがちだったが、それが一番危なかった。
結局、磯は“軽さが安全そのもの”だと今は感じている。
降りられるかどうかは、足の感覚で決める
斜面を降りる時、見た目以上に大事なのが足裏の情報。
踏んだ瞬間に「固いか」「柔らかいか」「湿っているか」がわかる。
もし足裏が少しでも柔らかく感じたら、そこは湿っている可能性が高い。
乾いて見えても“中だけ濡れている岩”は滑り方が異常に速く、一度滑り始めたら身体が止まらない。
迷ったら降りない。遠回りして安全な角度の道を選ぶ。
これが、磯での最初の生存ルールだと思う。
素人だけど、検証して最適は選ぶ。
