キャンプに行くたび、最終的に積み込まれている椅子がある。 重いことも、展開に少し力がいることも分かっている。それでも、結局これを持っていく。
軽さを求めるなら、もっと楽な椅子はたくさんある。 背もたれが倒れるもの、コンパクトになるもの、設営が一瞬で終わるもの。 合理だけで考えれば、ローチェア30は決して優等生ではない。
それでも、この椅子が外れたことは一度もない。 焚き火の前で腰を下ろした瞬間に、理由を説明しなくても分かってしまうからだ。
ローチェア30は、「便利だから使う椅子」ではない。 もっと別の理由で、選ばれ続けている椅子だと思っている。
Snow Peak ローチェア30の立ち位置を最初に整理する

まず最初に、この椅子の立ち位置をはっきりさせておきたい。 ローチェア30は「便利さ」や「軽さ」を最優先にする椅子ではない。
- ロースタイルキャンプ向けのチェア
- 座面が低く、安定感が非常に高い
- 重量は軽くない
- 展開はやや硬く、少しコツと力が要る
数値やスペックだけを見ると、マイナスに映る要素も多い。 だが、それらは欠点というより明確な性格だと感じている。
ローチェア30が真価を発揮するのは、頻繁に立ったり座ったりする場面ではなく、 一度腰を下ろして、しばらく動かない時間だ。
焚き火を眺める。 薪のはぜる音を聞く。 火の前で考えごとをする。
そういう腰を据える時間において、この椅子の安定感と座り心地は代えがたい。
ローチェア30は、 「焚き火と向き合うための椅子」という軸で捉えると、非常に分かりやすい存在だ。
座った瞬間に分かる「安定感」
座面が低い=安心して体を預けられる
ローチェア30に腰を下ろすと、最初に感じるのは重心の低さだ。 座った瞬間に「倒れない」「ブレない」という安心感がくる。
- 重心が低い
- 体を預けても不安がない
- ガタつきはほぼ感じない
地面との距離が近いことで、椅子というより「地面に安定して座っている」感覚に近い。 この感触は、軽量チェアではまず味わえない。
脚・フレームのどっしり感

脚とフレームの剛性感も、この椅子の大きな特徴だ。 座っていて揺れを感じる場面がほとんどない。
- 体重をかけてもブレない
- 焚き火前で姿勢が崩れにくい
- 安心して長時間座っていられる
感覚としては、「リラックスチェア」に近いというより、 腰を据えて構える椅子に近い。
焚き火の前で姿勢が安定するというのは、地味だが非常に重要だ。 火の前で落ち着いて過ごせるかどうかは、この安定感にかなり左右される。
軽さやコンパクトさを優先した椅子では得られない価値が、ここには確かにある。
生地の質感と冬の快適性

布がしっかりしている安心感
ローチェア30のシートに座ってまず感じるのは、生地の安心感だ。 薄い生地がピンと張っている、というよりも、 「布がちゃんと支えている」という感覚に近い。
- 「布!」と感じるくらいの厚みがある
- 体を預けても不安がない
- 体重が一点に集中しない
軽量チェアにありがちな、たわみすぎる感じや 破れそうな不安はほとんどない。 長く使っていく前提で考えると、この安心感はかなり大きい。
冬キャンプで感じたメリット
この生地の厚みは、冬キャンプでこそ効いてくる。
- お尻や背中が冷えにくい
- 座面から冷気を直接感じにくい
- ロースタイルでも寒さが和らぐ
ローチェアは地面に近いぶん、冷気の影響を受けやすい。 それでもローチェア30は、座った瞬間に 「冷たい」より先に「安定している」と感じる。
焚き火に当たっていなくても、 座面と背中が冷えてつらくなることが少ないのは、 この生地の質感によるところが大きいと思っている。
派手に語られる部分ではないが、 冬キャンプでは確実に効いてくる“見えない快適性”だ。
焚き火との相性は抜群

火の粉に強い生地
ローチェア30は、焚き火の前に置くことをためらわなくていい椅子だ。
- 何度か火の粉が飛んで焦げ跡はついた
- しかし、生地に穴が空いたことはない
- 過剰に気を遣わずに使える
もちろん耐火生地ではないし、無敵ではない。 それでも、薄手のチェアのように 「一瞬でダメになるかも」という緊張感が少ない。
焚き火前で使う椅子として、 扱いやすさと安心感のバランスがかなりいいと感じている。
「焚き火を見る姿勢」が自然に決まる
ローチェア30は背もたれの角度が固定だ。 リクライニングも、細かな調整もできない。
- 背もたれ角度は変わらない
- だからこそ姿勢が毎回安定する
- 深く座っても、だらけない
角度を探したり、体勢を変えたりする必要がなく、 座った瞬間に「焚き火を見る姿勢」が完成する。
くつろぎすぎない。 かといって、窮屈でもない。
火をぼーっと眺める時間にちょうどいい姿勢を、 道具側が勝手に作ってくれる感覚がある。
この椅子が 「焚き火と向き合うための椅子」と感じる一番の理由は、 この姿勢の安定感だ。
正直に言うと、不便な点もある

かなり重い部類の椅子
ローチェア30は、軽量チェアではない。 これは使い始めてすぐに分かる。
- 持ち上げた瞬間に「重さ」は感じる
- 車移動前提の椅子
- 手持ちで長距離を運ぶのは正直つらい
キャンプ場内を少し移動する程度なら問題ないが、 駐車場から遠いサイトや、 徒歩前提の運用には向いていない。
軽さを最優先する人にとっては、 この時点で選択肢から外れる椅子だと思う。
展開は少し硬く、力がいる

設置はワンタッチではない。 展開時には、少しコツと力が必要になる。
- 最初は「硬い」と感じやすい
- 慣れるまでは力の入れ方が分かりにくい
- 女性や子ども向けとは言いづらい
組み立てが複雑というわけではないが、 気軽さではレイチェアや軽量チェアにはかなわない。
疲れているときに 「誰でも一瞬で設営できる椅子」 ではないのは事実だ。
ただし、この重さと硬さは、 そのまま安定感と剛性につながっている。
ローチェア30の不便さは欠点というより、 この椅子の性格そのものだと感じている。
それでも一軍から外れない理由

重くて、展開も硬い。 正直、便利な椅子ではない。
それでも毎回キャンプの準備をすると、 結局ローチェア30を車に積んでいる。 その理由は、はっきりしている。
- 圧倒的な安定感がある
- 焚き火との相性が抜群にいい
- 座っていて気持ちが落ち着く
- ゆっくり過ごす時間を受け止める余裕がある
ローチェア30に座っている時間は、 「何かをしている時間」というより、 ただそこにいる時間に近い。
姿勢が安定して、体が揺れない。 だから余計な力を使わず、自然と呼吸が深くなる。
便利さや効率で考えれば、 もっと軽くて、もっと楽な椅子はいくらでもある。
それでもこの椅子は、 贅沢な時間そのものを受け止めてくれる。
便利じゃない。 でも、満足度が高い。
ローチェア30が一軍から外れない理由は、 結局そこに尽きる。
家でも使える理由
ローチェア30は、キャンプ用チェアの中では珍しく、 室内に置いても違和感が出にくいデザインをしている。
- デザインが主張しすぎない
- 木製アームが空間にやさしくなじむ
- アウトドア感が強すぎない
いかにも「外用」という雰囲気がないため、 リビングや書斎に置いても浮きにくい。
特に竹集成材のアームは、金属や樹脂にはない柔らかさがあり、 室内家具と混ざっても嫌味が出ない。
実際、家で腰を落ち着けて座りたいときにも使えるし、 読書やちょっとした休憩用の椅子としても成立する。
一点だけ注意するなら、床の保護。
脚部に傷防止用のゴムやフェルトを付ければ、 フローリングでも問題なく使える。
外だけの道具にせず、 生活の延長で使えるという点も、 ローチェア30の隠れた良さだと思っている。
どんな人に向いているか
向いている人
- 焚き火の時間を大事にしたい人
- 軽さよりも安定感を重視する人
- 一脚を「居場所」として使いたい人
ローチェア30は、作業用というより腰を据えて過ごすための椅子。 焚き火を眺める時間や、何もせず座っている時間を大切にしたい人には、非常に相性がいい。
向いていない人
- 軽量・コンパクトさを最優先したい人
- とにかく設営が楽な椅子を求めている人
- 家族全員分を同じ椅子で揃えたい人
持ち運びの軽さや展開の簡単さを重視する場合は、 他にもっと適したチェアがある。
ローチェア30は万能ではないが、 役割がはっきりした椅子だと感じている。
Snow Peak ローチェア30 基本スペック
| ブランド | Snow Peak(スノーピーク) |
|---|---|
| カラー | カーキ |
| 使用サイズ | 約58 × 65 × 高さ86cm |
| シート高 | 約30cm |
| 収納サイズ | 約160 × 180 × 1010mm |
| 重量 | 約3.6kg |
| 材質 | フレーム:アルミニウム合金 シート:ポリエステル 肘掛け:竹集成材 金具:ステンレス |
| 付属品 | 収納ケース |
まとめ|ローチェア30は「火と時間のための椅子」
- 軽くはない
- 楽でもない
- でも座ると、時間が変わる
焚き火を見ながら、何もしない時間。
その時間をちゃんと成立させてくれる椅子だと思っている。
便利さや効率とは、少し違う場所にある道具。
だからこそ、毎回「一軍」から外れない。
素人だけど、検証して道具は選ぶ。
